魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 魔王は『ぶっ』と噴き出した。

「それ、毒薬でしょ」

「だ、だけど、毒を以て毒を制すしかないんです。斑紋死病はそれだけ症状が重いんです」

「感染者の息の根まで止まるよね?」

「……はい。だから魔王様に頼るまでは、万能薬で凌ぐしかなかったんです」

「あー、なるほど。笑ってごめん。で、それも鍋で煮詰めて作るの?」

「ひたすら体に優しいように作る万能薬と違って、そっちは作るとしたら練って丸薬にします。熱に弱い毒もあるし」

「それならそれほど時間はかからずに作れる?」

「飲んだ人の心肺が停止しますけど、はい」

「ぷはっ。だけど、その丸薬が確実に病気だけを攻撃するようにすればいいわけだ。それと弱った体を回復させる効果も付与して……」

「簡単にいいますけど!」

「だって、僕には簡単だから」

「あっ」

(そうだった、この人は魔王なんだった)

「ただ魔女でも使える魔法のみで作らないといけないから……うーん、まずはその丸薬を作ってみてくれる?」
< 141 / 227 >

この作品をシェア

pagetop