魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
外に出ると、子どもたちが大ばばに飛行訓練をしてもらっているところだった。
「へえ、君もあんなふうに魔法を練習したの?」
3歳になる末の妹は、10センチ浮いただけでも怖がって泣いている。
「そうですよ。私も最初は怖かったです」
「魔王城は疾走してたのに」
「あー、あのときが今までで1番怖かったです」
魔王とイーダはクスクス笑った。
続いてふたりはシリエの横を通り過ぎた。
シリエは魔法を使って空中に洗濯物を広げ、シワを伸ばしてから干していた。
もうしばらく歩いていると、保管庫に到着した。
イーダはドアにかけられた魔法を解呪して、魔王を招き入れた。
出入口のある壁を除いて、残りの3面は床から天井まで棚になっている。
さらに部屋の中も、出入口に向かって縦方向に棚が等間隔で並んでいる。
「あっ、ドアは閉めさせてもらいますね。保管庫は、気温と湿度の管理をおこなってるんです」