魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
「……見て面白いですか?」
「僕は見るだけでも色々分かるんだよ」
「あっ、そうでした。たとえばどんなことが分かるんですか?」
「これは解熱効果があるね。標高の高いところに生えてたのかな?」
「当たりです! じゃあ、こっちは?」
「喉にいいのかな。あと湿地帯から取ってきた?」
「えーっ、正解です。名前も分かりますか?」
「それは無理」
魔王は苦笑いして首を横に振った。
「でもすごいです!」
イーダは、全ての棚を調べる魔王の横顔をずっと眺めていた。
ふたりは薬草瓶を両脇に抱えて調剤室に戻った。
ラーシュも帰ってきて丸薬の材料が揃うと、ソフィーが魔王の前で作り始めた。
ほかの魔女たちもわらわらと集まってきて、イーダと一緒になって、ソフィーとソフィーの作業工程を見学する魔王を取り囲むようにした。
そうしている隙に、ラーシュは音も立てずにどこかへ飛んでいった。