魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
「時間を戻すのは禁じられてますが、流れの速度をいじるのは大丈夫ですよね? あれ、人間界では遅くするのももしかしてダメですか?」
「いいえ。そんなことが可能だなんて知らなかっただけで……」
「覚えてしまえば、時間を操るのはそれほど難しくないと思いますよ。だから魔界では好き勝手に時間を戻すヤカラが現れて、混乱を招いたせいで禁止になったんです。遅くするのは、ほら、こんなふうです」
「ええっと、こうかしら……」
ソフィーは魔王の手本を真似た。最初は不発だったが、何度目かで成功した。
「そうです、そう。いいじゃないですか」
後ろから覗き込んでいた魔女たちは手を取り合ってよろこんだ。その中にはもちろんイーダもいた。
「ついでに、体力を回復させる魔法も付与したいところなんですが……保管庫にあったほかの薬草も使っていいですか?」
「ええ、構いませんが……」
魔王は手のひらを上に向けた。
ポンッ! とその上に薬草瓶が乗った。
(わっ、魔王様って何でもあり!)