魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
配達チームのメンバーは、毎回集落までたどり着くと、次の配達まで倒れるようにして眠っている。
(大魔女として、娘同然の子たちにそんな大変な仕事を頼まないといけないなんて……)
ソフィーはこのことが口惜しかった。
ソフィーは集落の代表である“大魔女”を務めている。
魔女にとって名前というのは、重要も重要だ。魔法での契約に使われるため、固有名詞以上の意味合いをもつ。
悪用されないよう秘匿にしていて、家族同然に暮らしている集落の魔女同士にしか名前は知らせないようにしている。
だから、集落外の者たちは魔女のことを『魔女さん』、『魔女様』、あるいは『魔女殿』などと呼ぶ。
その中で、ソフィーだけが唯一『大魔女』と呼ばれているのだ。