魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
「すごい……ラーシュよりも早い……」
「当然。魔王がじ……使い魔に負けるはずないよね」
「じゃあ、ついでにマンドラゴラもほしいんですけど」
「それって、どんなの?」
「根っこが分かれてて……」
「こらっ!」
ソフィーがイーダを嗜めた。
(あっ、私また調子に乗っちゃった)
イーダが肩をすくめると、窓から複数のクスクス笑いが聞こえてきた。
「せっかく帰ってきたのに、大魔女に怒られてる」
外で飛行訓練をしていたはずの子どもたちだった。
「ねえ、魔王様、私たちにも魔法教えて」
ソフィーは窓のそばに寄った。
「こらっ、貴方たちも! 魔王様は遊んでるんじゃないの。これは国王陛下からお願いされたお仕事なの」
「でも、母さんや姉さんたちばっかりズルーい!」
魔王は畏怖する対象ではないと判断したらしい。
(あんなに怖がってたはずなのに、その変わり身の早さはどういうこと?)