魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 でも、それは自分にも当てはまることかもしれない。ましてや自分は恋までしてしまっている。

「じゃあ、僕と魔法で遊ぶ?」

「ええっ、それは申し訳ないです」

 ソフィーは自分や子どもたちとは違い、きちんと恐れ多いと思っているようだ。

「いいんですよ。でも困ったことがあったら、いつでも呼んでください。すぐに戻ってきます」

 そういうと、魔王は宙を浮き、窓から出て行ってしまった。

 目撃していたのは全員魔女だったけれど、ひとり残らず目を丸くした。

「箒なしで飛んじゃうんだ」

「魔王様、やばっ」

 ソフィーはイーダを肘で突いた。

「イーダも行きなさい」

「私も特効薬作るよー」

「いいから。イーダが連れ去られて、あの子たちはたくさん泣いたのよ。一緒に遊んであげて」

「そういうことなら。母さん、ありがとう」

 魔王が子どもたちに何かするとは全く思っていなかった。

 けれど、なるべく魔王と一緒にいたほうがいいんだろうし、そうしたいとも思う。

 行かせてくれたことを有難く感じながら、イーダはドアを開けて外に出た。
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