魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 外では魔王による飛行訓練が始まっていた。

 といっても、子どもたちは箒に乗っていない。

 にも拘らず、ぷかぷか浮いていた。

「君も参加する?」

「えっ?」

 魔王はイーダの返事も待たずに、イーダの体を浮かせてしまった。

 自分がシャボン玉にでもなったみたいだ。

 ふわっと浮いたあと地面に着地しても割れることはなく、柔らかい力で空中に跳ね返される。

「怖くないだろ?」

 子どもたちは『怖くなーい』と笑って答えた。

「飛ぶときも、速度を出さなければいいんだよ」

 魔王は『やってごらん』と、さっき飛ぶのを怖がっていた末の妹を下ろして箒を手渡した。

 妹は、恐る恐る箒にまたがった。

「ゆっくり、ゆっくりだよ」

 魔王の優しい声かけ合わせて、徐々に箒の高度を上げていった。

 魔王の顔の高さまで来た。

「高さはそのぐらいで止めて、今度はゆっくり前に進んでみよう。失敗しても僕が捕まえてあげるから」

 妹は頷いた。そうして、水平に飛んだ。
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