魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

(あの人、確か領主様のご子息じゃなかった?)

 面と向かって会ったことはなかったけれど、知ってはいた。

 両親とは違って細身の体型。そして優しげな瞳と、王家の傍系でありながら高貴なプラチナブロンドの髪。領内の若い娘たちに絶大な人気があった。

 ソフィーが門番に礼をして敷地の外へ出る隙をついたつもりだったのだろう。

 子息は柵をよじ登った。

 しかし、乗り越えようとしたときにベストを引っかけてしまい動けなくなった。

 ソフィーは笑いをかみ殺しながらその場から離れた。

 それから誰にも気取られないように魔法を使って、ベストを取ってやった。

 そのあともソフィーは子息をこっそり観察し続けた。

 どうやら彼も中央街に行くらしい。

(ちょうどいいし、面白そう!)

 ソフィーは尾行することにした。
< 158 / 227 >

この作品をシェア

pagetop