魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 丸薬が完成した頃には、魔女たちはぐったりしていた。

「や、やっと王都中に配れる量が完成……」

「うん、私たちやり切ったね」

 疲労困憊しているにも拘わらず、魔女たちは充足感から微笑んでいた。

「僕が責任をもって王宮に納品にいってきますね」

「よろしくお願いします」

 ソフィーは丁寧に頭を下げた。

「じゃあ、さっそく行こうか」

 魔王とイーダがいなくなったあとも、魔女たちは興奮冷めやらぬ様子だった。

「今夜は打ち上げ? 葡萄酒で乾杯する?」

「いいね、それ!」

「食事はどうしよう?」

 わいわいと宴会の計画が立てられていく。

 ソフィーも始めのうちは笑顔で聞いていた。

 けれど、次第に不安が押し寄せてきた。楽しそうに相談する声が遠ざかっていく。

 ソフィーは輪から外れてラーシュを呼んだ。

「王宮に行って、事の成り行きを見届けてきてほしいの」

 ラーシュの飛んでいく姿を祈るような気持ちで見送った。

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