魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

「ではさっそく感染者に飲ませます。もしよろしければ、今日のところは時間も遅いことですし、王宮に滞在されませんか?」

 国王の提案に、魔王はぱっと顔を輝かせた。

「晩餐の用意もさせましょう」

 さらなる提案に、魔王は期待した目でイーダを見た。

「魔王城にだって帰ろうと思えばすぐ帰れるんだけど、王宮に泊まってみたいなー」

「魔王様は王宮に興味があるんですか?」

「王宮だけじゃなくて、人間界なら何でも興味あるよ」

 イーダはクスっと笑ってしまった。

(魔王様にこんな目でお願いされたら断れっこない。それに私も王宮のごちそうを食べてみたいし……)

「じゃあ、そうさせてもらいましょうか」

 魔王様は、『うん、うん』と何度も頷いた。


 晩餐の準備が整うまでの間、王宮内のパプリックエリアを見学させてもらうことにした。

 魔王は歴代の国王の肖像画や、建国の歴史を物語る壁画を眺めながら感心しきりだった。

「僕だけ楽しんでてごめんね?」

「いえ、私も楽しいですよ」

 本心だった。
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