魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

「本当に? でも、さっきから僕のことばかり見てるよね?」

「そ、それは!」

(だって、魔王様があんまりにもいい顔してるから目が離せなくて……って、そんなこと魔王様に説明できなーい!)

 イーダは顔を赤くした。

「まあ、王宮は見慣れてるんだろうからなー」

 魔女の集落から無理やり連行されてきたときには、このエリアには来ていない。

 だから見慣れるどころか初見なのだが、イーダはそういうことにしておいた。

「魔王城ももうちょっと飾り気があったほうがいいかなー。どう思う?」

「どうでしょう……でも、お庭があるといいかもしれません」

 イーダは見学した中では庭園が最も印象に残っていた。

 すると魔王は口を尖らせた。

「屋内庭園でいいならできるんだけど……」

「屋内庭園、」

 『いいじゃないですか』と言いかけて、イーダはそれを飲みこんだ。

(二度と魔王城へ行くことのない私からは、これ以上は言わないほうがいい)

 イーダは曖昧に微笑んで、それきり黙っておくことにした。
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