魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

  国王も含めた会議出席者との、少しも打ち解けることのない重苦しい雰囲気の晩餐後、魔王とイーダは部屋へ案内された。

「本日はこちらの部屋をお使いください」

(魔王様と同室?)

 王宮の人たちは、イーダを魔王の花嫁として差し出した。そしてそのイーダが、魔王と一緒に王宮を訪ねてきたのだ。

(ひょっとして夫婦と認識されてる?)

 そうかもしれない。

(だけど、同室って……)

「わー、凝った部屋だね」

 魔王は部屋を隅々まで見て回った。

 けれどイーダの目は部屋の4分の1を占めているであろう大きなベッドに釘付けされた。

(ベッドがひとつしかないけど?)

 魔王は王国側のお願いをきいて特効薬を作ってくれた。

 なら、今度はイーダが魔王のお願いをきくターンのはずだ。

(えっ、私は今夜実質的に花嫁になっちゃうわけ?)

「ねえ?」

 魔王がイーダの顔を覗き込んだ。

「わっ、あっ、は、はい!」

 イーダは後ろに足を引きながら上擦った声で返事をした。
< 168 / 227 >

この作品をシェア

pagetop