魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
国王も含めた会議出席者との、少しも打ち解けることのない重苦しい雰囲気の晩餐後、魔王とイーダは部屋へ案内された。
「本日はこちらの部屋をお使いください」
(魔王様と同室?)
王宮の人たちは、イーダを魔王の花嫁として差し出した。そしてそのイーダが、魔王と一緒に王宮を訪ねてきたのだ。
(ひょっとして夫婦と認識されてる?)
そうかもしれない。
(だけど、同室って……)
「わー、凝った部屋だね」
魔王は部屋を隅々まで見て回った。
けれどイーダの目は部屋の4分の1を占めているであろう大きなベッドに釘付けされた。
(ベッドがひとつしかないけど?)
魔王は王国側のお願いをきいて特効薬を作ってくれた。
なら、今度はイーダが魔王のお願いをきくターンのはずだ。
(えっ、私は今夜実質的に花嫁になっちゃうわけ?)
「ねえ?」
魔王がイーダの顔を覗き込んだ。
「わっ、あっ、は、はい!」
イーダは後ろに足を引きながら上擦った声で返事をした。