魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
「あの……魔王様は、遅くまで起きてたんですか?」
「ううん、僕もあのあと割とすぐに寝たよ。僕は魔法使って」
「魔王様は魔法がないと寝付けなかったってことですか?」
「あー、ベッドを切り離してても君の寝息が聞こえるとどうしても……」
魔王が言い淀むと、イーダは絶望的な気分に陥った。泣き声さながらの声が出る。
「いびき? もしかして私、いびきかいてました!?」
(しかも、魔法を使わないと眠れないほどうるさかったの?)
「違うよ! その……可愛い寝息だったよ……」
(可愛いいびき……『ズコー、ズコー』っていう大音量ではなかったってこと? だけど……)
それにしては、魔王は尋常ではない焦りっぷりだ。
「そ、そんなことより、人を呼んで朝の支度を手伝ってもらおう! ね?」
(魔王様に気を遣わせるなんて、やっぱりヒドいいびきだったんだよー! 恥ずかしーい!)