魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
 魔王の持参した特効薬を昨夕のうちに飲んだ感染者たちが回復した──

 その知らせは、早朝王宮に届いたそうだ。

 通された朝食室で朝食を済ませた魔王とイーダは、王宮の者からそう報告を受けた。

「国王陛下が改めて魔王様にお礼を述べたいとのことです」

「お礼なんて不要なんだけど、依頼が完了したことの確認は必要だからなー」

 魔王は少し面倒くさそうに言う。

「魔女殿はお部屋に戻ってお待ちください」

 魔王だけが謁見の間へと案内され、イーダは部屋まできっちり送り届けられた。

 イーダは、魔王が朝になって戻した大きなベッドの真ん中に寝そべった。

(ふーんだ。お礼を言うのに魔王様だけ呼ぶなんてさー)

 ごろごろと転がって、魔王が使っていた半分側に移動した。

 昨日の魔王が思い出された。
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