魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 魔王は、イーダがオリーヴィア第一王女でないことは知っている。

 それでも、このままイーダと結婚するつもりでいるようだ。

(どうしてなんだろう?)

 イーダが魔女であることを気にしないところまでは理解できる。

 しかし、卑しい身分の自分が、果たして魔王の王妃になれるものだろうか……

(もしかして……)

 ひとつの可能性に気がついて、はっとした。

 魔王はイーダのことを王宮からやってきたどころか、王宮に住んでいたと思っている節がある。

(まさかと思うけど、オリーヴィア王女殿下ではないにしても、王族の関係者ではあると勘違いしてる可能性はない……?)

「だったら、このまま私が花嫁になったらダメなのかな……」

 ぽろっとこぼれ落ちた本音に、イーダはぎょっとした。

(平民の分際で王女殿下の代わりになれるはずないでしょ? 私ってば何考えてるの……)

 頭上にたくさんあるクッションのうちのひとつを出鱈目に手に取り、顔を埋めて抱き締めた。
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