魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

(婚姻の儀式が終わったら、侍従長に夫婦の寝室を準備してもらおうか。うわー、毎晩隣に王女がいるって……)

 『うわー』なんて思っておきながら、期待が膨らみに膨らむ。

 そうと決まれば、あれほど憧れていた人間界にいるにも拘らず、さっさと魔王城へ帰ってしまいたかった。


 謁見の間では、すでに国王が待機していた。

 昨日それが無駄であることは十分に教えたはずだったが、隅には武器を装備した者たちもずらりと並んで立っている。

(やるつもりはないとはいえ、こっちは王宮を吹き飛ばして更地にしてしまうことも、王国全土を焼け野原にしてしまうことも容易なのになー)

 とりあえずこの場で近衛兵の持っている武器だけ使えないものにしておこうかと思ったが、それをするのすら億劫に感じた。

 それに悪巧みの臭気は、彼らから漂っているのではない。

(漂っているのは……)
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