魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 魔王の姿が見えるなり、国王は玉座から腰を浮かせた。

「魔王様の作ってくださった特効薬は実に素晴らしい!」

 腹にあるいちもつを誤魔化すように、上機嫌で話し始めた。

「いや、作ったのはこの国の魔女ですよ」

「とはいえ、魔王様のご指南があればこそでしょう」

「まあ、こちらも王女に嫁いでいただきましたので」

「そのことなのですが……」

 国王は自分の後方を振り返った。

 国王と同じプラチナブロンドの髪に、やはり同じヘーゼル色の瞳をした少女が立っていた。

「どうか怒らないで話を聞いていただきたい。これは私の娘のオリーヴィアです」

 国王から紹介された少女は、膝を曲げてカーテシーをした。

 『怒らないで』も何も、魔王にとってはどうでもいいことだった。

 微塵も興味がない。

 それよりも、自分の王女の名前は何というのだろうと、そればかりが気になって仕方がない。
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