魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

「このまま魔王様を欺き続けるわけにはいけません。魔王様の特効薬によって完治した今、魔王様には真実をお話しして、オリーヴィアを嫁がせたいと……」

 国王がまくし立てるのを、魔王は最後まで聞いていられなかった。

「何の茶番だ」

 魔王は嘆息し、冷たく言い放った。

「とてもではないが、付き合ってられない。取引は完了した。帰らせてもらう」

 魔王は自分の花嫁である王女をこの場に転移させた。

「魔王様!」

 魔王の顔を見上げてうれしそうにしたから、魔王のほうもうれしくなって微笑み返した。

「用は済んだから帰ろうか」

「待ってください!」

 オリーヴィアが足を一歩前に出して叫んだ。

「魔王様はその者に騙されています!」

「この僕が? 騙される? 不愉快なことを言ってくれるな」

 あまりにも馬鹿馬鹿しすぎて、失笑してしまう。

(だいたい騙そうとしてるのはお前らのほうだろ!)

「ですが、私こそが魔王様の望まれた第一王女です」

「何戯言を言ってるんだ?」
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