魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

5.4

 特効薬の材料を集め終わって魔界に帰ってきてからも、魔王とイーダのことはずっと気にかかっていた。

 だからその日のうちにもう1度ソフィーから呼ばれたとき、侍従長はしめたと思った。

 魔王と侍従長が揃って城を不在にするにも拘らず、部下たちへの指示はそこそこに人間界に駆けつけた。

(どんな緊急性の高いお使いを頼まれようとも、その合間に何としてでも魔王様とイーダの様子も確認しなければ!)

 意気込んで出かけた。

 けれど、その必要はなかった。ふたりのことを気にかけているのは、ソフィーも同じだったからだ。

「王宮に行って、魔王とイーダの様子を見てきてほしいの」

 ラーシュは『カアァ!』と大きくひと声鳴いて、首を勢いよく縦に動かした。

(まさに私が望んでいたことです!)

 ソフィーは、魔王については何も心配していないだろう。まあ、魔王が何かしないかのほうを案じている可能性は考えられるが。
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