魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 気がかりなのは、イーダのはずだ。

 ソフィーの目の届かないところで、国王と会ってしまうかもしれない。

 いや、特効薬を届けに行ったのだ。それも魔王と一緒に。国王と対面すると思っていいだろう。

(可能ならソフィー自身が王宮に飛んでいきたいところでしょうね)

 そんな大事な局面で、ラーシュを指名してくれたのだ。

 若き日のソフィーが秘密にしていた恋物語を知っている自分を。

「よろしくね」

(任せてください)

 ラーシュはソフィーを安心させるために力強く頷いた。

 あの恋物語は完全に終わったと思っていた。

(こんな形で未だにソフィーを苦しめようとは……)

 場合によっては、今や国王となったサンディ相手であろうと、体当たりでも何でもする腹を決めた。

 王宮を目指して翼を動かしながら、ラーシュは20年前を回想した──
< 185 / 227 >

この作品をシェア

pagetop