魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
気がかりなのは、イーダのはずだ。
ソフィーの目の届かないところで、国王と会ってしまうかもしれない。
いや、特効薬を届けに行ったのだ。それも魔王と一緒に。国王と対面すると思っていいだろう。
(可能ならソフィー自身が王宮に飛んでいきたいところでしょうね)
そんな大事な局面で、ラーシュを指名してくれたのだ。
若き日のソフィーが秘密にしていた恋物語を知っている自分を。
「よろしくね」
(任せてください)
ラーシュはソフィーを安心させるために力強く頷いた。
あの恋物語は完全に終わったと思っていた。
(こんな形で未だにソフィーを苦しめようとは……)
場合によっては、今や国王となったサンディ相手であろうと、体当たりでも何でもする腹を決めた。
王宮を目指して翼を動かしながら、ラーシュは20年前を回想した──