魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 知り合った当初から、領主の子息サンディはソフィーにぞっこんだった。

 連絡をするのはいつもソフィーのほうからだった。その手段は使い魔のカラス。

 ソフィーは街に出かける予定があると、サンディに手紙を送った。

 サンディも同日に抜け出せるようなら、返事で待ち合わせ場所を指定し、ラーシュに託した。

 始めのうちは最初にソフィーと行ったカフェだったが、ふたりの共通のスポットが増えるにつれ、別の場所が指定されることも増えていった。

 ソフィーのほうも最初から憎からず思っていたからこそ、デートを重ねたのだろう。

 ソフィーの気持ちがサンディに追いつくのに、それほど時間はかからなかったように思う。

 ソフィーは集落でひとりきりになれるチャンスがあれば、すぐにラーシュを呼びつけた。

 そうして、しあわせそうにトロけた笑顔で『サンディがね、』と惚気話を話して聞かせた。

 ソフィーの恋人の存在を知っているのはラーシュだけだった。
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