魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

(おおっ、あの優男がついに! ……なら、何を泣く必要が?)

 ラーシュは嫌な予感がした。

「私、身の程知らずだから浮かれちゃった。『魔女なのにいいの?』なんて笑って聞いたりして。だけど、そうしたらサンディはいきなり青ざめたの。『魔女?』って。あの人、私が魔女って気づいてなかったんだって」

(はああああ? どこまでボンクラなんでしょうか!?)

「そういえば、きちんとは伝えてなかったな。だけど、毎月お邸に痩身薬を配達してたし、貴方っていう使い魔が毎回手紙を届けてくれてたじゃない? それで気づかなかったなんて……」

 ソフィーは話しながら袖で涙を拭っていた。

 その袖は、腕に張り付いてしまうほど濡れていた。

(目をそんなに強く擦ったらいけないですよ……)
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