魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
ドアが開くのを待って、帰ってきた娘たちに声をかけた。
「ご苦労様でした。疲れたでしょう。さあ、ばばたちが作ってくれた滋養スープを飲んで、しっかり休んでちょうだい」
「ソフィー母さん、」
「どうしたの? 何かあった?」
「これ……」
配達チームの中で最年長の魔女が、ソフィーに封書を差し出してきた。
「薬を届けに行ったら、いかにも偉そう感じの人たちが私たちのことを待ち構えてて。それで、これを『大魔女殿に渡してほしい』って」
蝋で封がされていて、それに捺されていたのは紛れもなく玉璽だった。
(国王陛下から? 直接魔女に?)
ソフィーは動悸を鎮めたくて、目を閉じゆっくり息を吸って吐いた。
まぶたの裏に国王陛下の顔を浮かんでくる。
といっても、ソフィーが知る若い頃の顔だったけれど。