魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 次にソフィーに呼ばれたとき、ラーシュは目を丸くした。

「カアアァァ!」

「あっ、このお腹? 実は前回ラーシュを呼んで話を聞いてもらったときには、すでに妊娠してたみたいなの」

 吹っ切れたように明るい顔だった。

 最初に指摘したのは当時の大魔女だったという。

「私のお腹に、『別の魔力が宿ってる』って。ラッキーでしょ? 魔女ならこの集落で育てられるもの。だけど、父親が誰なのか私が口を割らないでいたら、大魔女は『父親の名前が言えないのなら、母親のことも秘密にしなさい』って。この子は孤児院から引き取ってきた子ってことにするの」

(それでいいんですか……)

「ラーシュ、もしかして私のこと可哀そうって思ってる? 違うの。私が実の母だって分かってたら、この子は成長したら父親が誰なのか知りたくなるかもしれないでしょう? でも、父親のことは教えられない。だから大魔女に従うのが最善なの」
< 191 / 227 >

この作品をシェア

pagetop