魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 『そんな顔しないで』とソフィーは笑った。

 カラスの自分はどんな顔をしていたのだろうか……

「それに考えてもみて! この子は父親を永久に失うかもしれないけど、代わりにたくさんの祖母と母と姉ができるのよ」

 サンディとは恐らくあれきりになったのだろう。

 それでも逞しく笑うソフィーは、すでに母親の顔になっていた。

 この日からラーシュも人間界に呼ばれる度に、ソフィーとイーダを見守ってきた。

 実の母娘であることをイーダは知らなくても、紛れもなく母娘そのものだった──

(イーダと、そしてソフィーのためにも、一刻も早く王宮へ行かなくては……)

 ラーシュは全速力で王宮へと向かった。
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