魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
(もしもイーダさえよければ、このまま魔王様の伴侶になってもらえないものでしょうか……)
昨日も今日も魔王は楽しそうだった。
怒ったりギクシャクしたりする場面もあったけれど、それはほんの短い時間だ。楽しそうにしている時間のほうがずっと長かった。
イーダだってそうだった。イーダも魔王のことを好ましく思っているのではないだろうか。
ふたりが一緒にいることが必然であるかのように思わせる何かが、そこには確かに存在していた。
イーダなら……と思ってしまう。
(イーダなら魔王様に相応しい……)
何ならソフィーのお腹にいたときから知っている。
素直で朗らかな美しい女性に育った。
そして、家族思いな……
そこでラーシュの思考は急ブレーキがかかった。
(ああ、そうだ。イーダには18人の大家族がいるのだった……)
重要なことを思い出してしまった。
いっそ思い出さなければよかったかもしれないが、もう手遅れだ。