魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

(もしもイーダさえよければ、このまま魔王様の伴侶になってもらえないものでしょうか……)

 昨日も今日も魔王は楽しそうだった。

 怒ったりギクシャクしたりする場面もあったけれど、それはほんの短い時間だ。楽しそうにしている時間のほうがずっと長かった。

 イーダだってそうだった。イーダも魔王のことを好ましく思っているのではないだろうか。

 ふたりが一緒にいることが必然であるかのように思わせる何かが、そこには確かに存在していた。

 イーダなら……と思ってしまう。

(イーダなら魔王様に相応しい……)

 何ならソフィーのお腹にいたときから知っている。

 素直で朗らかな美しい女性に育った。

 そして、家族思いな……

 そこでラーシュの思考は急ブレーキがかかった。

(ああ、そうだ。イーダには18人の大家族がいるのだった……)

 重要なことを思い出してしまった。

 いっそ思い出さなければよかったかもしれないが、もう手遅れだ。
< 197 / 227 >

この作品をシェア

pagetop