魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 イーダがもし天涯孤独だったのなら、あの手この手で魔界に引き留め、魔王の魅力をプレゼンするところだ。

 しかしイーダには帰る家があるのだ。そしてその家では、ソフィーがイーダの帰りを待っている。

(残念ですが諦めないといけませんね。魔界に帰ったら、やはり魔王様には大規模な婚活パーティーを開いて、慰めて差し上げましょう)

 第一王女の件を話すのは明日でもよいだろう。

 ラーシュも疲れていた。本音をいえば、すぐにでも横になりたかった。

 王宮の内部にこっそり忍び込み、空室のベッドを拝借することにした。

 さすが王宮のベッド。寝心地は抜群だ。

 とたんに身体が重くなった。

(老体に鞭を打ちすぎました)

 カラスの姿ゆえ、まぶたが下から上がってきた。完全に閉じられて、ラーシュの意識は闇夜と一体化した──
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