魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
オリーヴィアの母親は王妃だと公式に知られている。
(つまり、私の異母妹……?)
似ているだろうか?
オリーヴィアを盗み見た。
イーダを身代わりの花嫁に仕立てたメイドたちは、イーダがオリーヴィアに似ていることに驚いていた。
けれど、自分では分からない。
むしろ異なる部分にばかりに目がいく。
(顎のラインが王女殿下はシャープだ。私のほうはもっと丸い)
それがソフィーと同じ輪郭だということに、今さらながら気がつく。
(そうだ、髪!)
イーダは下を向き、流れ落ちる自分の髪を見た。
(これはソフィー母さんの色?)
昔が思い出される。ソフィーもまだ若く、髪に白髪が混じるよりも前のことだ──
ソフィーが幼いイーダの髪を結ってくれていた。
(あのとき、自分でソフィー母さんに言ったんじゃないの。『私の髪、ソフィー母さんとそっくりだから、本当の親子みたいに見えるね』って)