魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
「そうね……本当にそうね……」
ソフィーは一寸手を止め、そう小さく呟いた。
あのとき、ソフィーは一体どんな顔をしていたのだろう。
思い出せない。
結ってもらった髪に夢中で、見ていなかったのかもしれない──
「痛てて。ラーシュ、やめろって。くちばしは本気で痛い!」
魔王の声で、イーダは現実に戻された。
「はあ? 『秘密だった』って言われても、人間にだって一目瞭然だろ。同じ色なんだから。ええ? 人間の目では同じ色なことは分かっても、親子かどうかまでは分からない? 知らないよー、そんなこと」
イーダの混乱をよそに、魔王とラーシュは言い合いを続けていた。
「それに言ってしまったものは、今さらどうにもできないだろ? なのにお前がそんなに怒るんなら、時を戻すしかなくなるんだけど?」