魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
ラーシュは途端にしおらしくなった。
(秘密だった……つまり魔王様の勘違いじゃなくて、私は本当に……?)
「知らなかったことはいえ、秘密をバラしたのは悪かったよ。だけど、とにかく僕が花嫁に望んでいたのは最初からこっちの王女。そういうことで、もう帰らせてもらっていいかな?」
「ま、待ってください!」
オリーヴィアはそれでも食い下がった。
「ですが庶子よりも、嫡子である私のほうが魔王様には相応しいはずです!」
魔王は面倒くさそうな視線を投げ、うんざりしたように嘆息した。
「悪いんだけど、」
これっぽっちだって悪いとは思っていないことは明々白々だった。
「そういうの、魔界では本気でどうでもいいんだ。魔王である僕が惚れて望んだ妃っていう、その1点だけが重要だから」
(ほ、惚れ……!!)
イーダはそんな場面ではないはずなのに、顔を真っ赤にして照れてしまった。