魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

「昨日頂いた特効薬は、全て配ってしまいました。魔王様、この通りです。どうかもう1度特効薬を作ってください!」

 オリーヴィアは手を組んで魔王に懇願した。

「だから、作ったの僕じゃないし……」

 国王もオリーヴィアに続いた。

「対価は何でも払いますから、娘と王宮の者たちを助けてください!」

 魔王は無情にも、『えー』と顔をしかめた。

「君たちからほしい対価なんて、これ以上はないんだ。ああ、だけど魔女たちにお願いすれば、作ってくれると思うよ。気のいい人たちばかりだから、見捨てるなんてできないだろうね。ただし、きちんと頭は下げてよ。僕にとっても義理の家族になる大切な人たちだから、くれぐれも失礼のないようにして」

 オリーヴィアも騎士も、ついでに国王も、この瞬間に斑紋死病が発症したのではないかと疑いたくなるほど顔色を悪くした。

「さっ、おいとまして魔界に戻ろうか。魔王城を長く留守にするのもよくないから」
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