魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
軽く返事をしたけれど、心臓が押し潰されてしまい、苦しいし痛い。
(ここで魔王様だけ魔界に帰してそれっきりにしてしまえば、ソフィー母さんが魔王様に直接怒る機会すらないんだ)
「じゃあ、僕はいい加減、魔界を留守にし続けてるわけにもいかないから、先に帰ってるね。あっ、逃げるわけじゃないんだ。くれぐれも大魔女にはよろしく伝えてね」
「そんなに心配しなくても大丈夫だと思いますよ。大魔女……母さんは、魔王様に悪気がなかったことを理解してくれるはずです」
『うん、そうだね』と、魔王は頷いた。
それから優しく囁くように言った。
「王女には、大魔女と心ゆくまで話してほしい。その気持ちは本当なんだけど、なるべく早く戻ってきてほしいとも思ってる」
イーダは微笑もうとしたけれど、ぎこちなく歪んだ笑顔になってしまった。
「魔界に戻れるようになったら、いつでも僕のこと呼んで」
「呼ぶ……」