魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
「偶然とはいえ、僕を呼んでくれたタイミングで転移させてあげられてよかったよ。でも、次からは僕に届く方法を使って呼んでくれる?」
「『届く方法』……それってどんな?」
「僕に聞こえるかどうかは、呼び方の問題じゃないんだ。魔法を使ったんじゃない? 僕より、王女自身の方が分かると思うんだけど。人間界から魔界にいる僕に呼びかけてくれただろ?」
「あっ、最初に婚礼衣装を着て王宮から呼びかけたときのことですね?」
あのときはあれで魔王に届くのか、正直にいうと自信はなかった。試しにやってみたら成功したというだけのことだった。
「実はそれより前にも1度」
「私があれ以前にも魔王様に呼びかけた? えっ、嘘ですよね?」
「やっぱり気づいてない?」
魔王は笑いを必死でこらえている。