魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

(『気づいてない』って……? でも魔王様に呼びかけておいて気づかないなんてこと、あり得ないと思うんだけど……だったら、すごく小さい頃で覚えてないだけとか?)

 イーダは目をパチパチさせた。

「とにかく、その2回と同じ魔法で呼んでくれれば、君の声は聞き逃すことなく聞こえるはずだから。あっ、でも『魔王』って呼ぶ必要がないからって、『まる』とか『こてつ』は遠慮してほしいかな?」

(『まる』……『こてつ』……)

「あーーっ!!」

 イーダはようやく気がついた。

「あのネズミもどき!」

「『もどき』って言い方」

「だって、角があったから……」

 そうだ、あの角はちょうど今目の前にいる魔王の角を縮小したような……

「やだっ、本当に?」

「本当に」

 魔王はおかしくて仕方がないようだ。さっきから笑いが止まらない。
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