魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
「とかそんなこと関係なく、キスしてほしいです」
イーダが言い終わらないうちに、魔王はイーダの腰を抱き寄せた。もはや魔王から笑みは消えていた。
そうしてイーダの口は塞がれた。
初めてのキスや先ほどのキスとは全然違う。
触れるのではなく、食むような……
(魔王様……魔王様…………魔王様!)
イーダも魔王の腕を夢中で掴んだ。
(このまま……このまま一緒に魔界に連れ帰ってほしい!)
けれど、魔王の腕からイーダを抱きしめていた力がすうっと抜け、唇も離れてしまった。
魔王はイーダの希望を尊重してくれただけのこと。それにガッカリするのはお門違いだ。
分かっていた。
分かっていたけれど、ずっと抱きしめていてほしかった。
「魔界で待ってる」
そう言い残し、とうとう魔王は消えてしまった。