魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 ソフィーは身体をイーダから離すと、イーダの瞳を覗き込んだ。

「イーダも魔女としてもすっかり一人前だし、子育てもひと段落したわ」

「母さん……」

「それにね、実はまた『魔女じゃないかと思われる赤子がいる』って連絡が入ったの。私が引き取ってこようかしらね」

 ソフィーは楽しそうだ。

「大魔女がまた一から子育て?」

「そう! だから忙しくて、きっと淋しがってる暇もなくなる。そうそう、この機会に国王陛下には魔女の地位向上も訴えていかないとね。バックに魔王様がいる今なら……」

 ソフィーは『ふっふっふ』と笑った。

「母さん、すごく悪い顔してるよ?」

(したた) かって言ってよね。国王陛下の子どもをこっそり産んで育てて、さらに大魔女もやってるのよ。このくらい強かじゃないとね。さあ、大魔女として集落を発展させて、みんなをもっとしあわせにしてみせるわ」
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