魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
足元が青白く光った。
「それですぐさま魔法陣を出すなんて、やっぱりマティアス様のほうがせっかちですよ」
「そういうことでいいよ。だってようやく名前を教えてもらえたんだ。待ちきれない」
魔王のことを揶揄いながらも、イーダはうれしかった。
「だけど、すでに名前を教え合ってしまったからなー。人間界のやり方を少し真似てみようかな」
魔王は『コホン』と咳払いをした。
「僕マティアスは、イーダを妻として愛し敬い慈しむことを誓います」
イーダももちろんそれに倣った。
「私イーダは、マティアス様を夫として愛し敬い慈しむことを誓います」
光が強くなり、ふたりを取り巻いた。
「誓いのキスをしてもいい?」
「あーっ! もしかして、それがしたくて人間界のやり方を?」
「正解!」
「ふふっ、ふふふ」
イーダはこみ上げてくる笑いを我慢できなかった。
けれど、魔王によってすぐに止められてしまった。