魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

「それじゃあ、王宮に行ってくるわ」

 箒にまたがって深く息を吐いたあと、一気に浮上し加速した。

(サンディは大魔女が私だってこと、知ってるのかしらね……)


 全く気の進まない半日の小旅行を終え、王宮に到着したときにはどっぷりと日が暮れていた。

 初めて訪れた王宮。それでもバルコニーはすぐに分かった。

(娘は何て言ってた? 確か『薬瓶はバルコニーの左端に置くことになってる』って……でも、『左端』って、どっちから見て左のこと?)

 一瞬迷ったけれど、バルコニーの向かって左側に人がいるのが見えた。少し離れて、その人物を囲むように護衛らしき騎士が立っているのも。

 ラーシュが返事の手紙を国王にきちんと届けてくれたことが分かった。

 上空からその方角へ向かう。

 窓から漏れる光に照らされた顔を見て、老けたなとソフィーは思った。それとお腹周りにもずいぶんと貫禄がついて、重そうになった。
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