魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 けれど、お互い様だ。

 ソフィーだってお腹こそ出ていないものの、40代に差し掛かったここ数年で、髪には若い頃のような艶はなくなり、白いものもずいぶんと混じるようになった。

 魔女なのだから、髪用の美容液ぐらい簡単に作れるし、毛染めだって可能だ。

 けれど綺麗になって見せたい相手がいるわけでもない。

 それに大魔女という立場上、老けて見えることはプラスに働くことだってある。

 だから放ったらかしにしていた。

 しかし、そのことを今だけ後悔した。

 惨めな生活を送っているように見えでもしたら……と思ったのだ。

(だけど、ここ1ヶ月の激務を訴えるにはちょうどいいのかもしれない……)

 気を取り直したソフィーが高度を下げていくと、国王陛下は目を見開いた。どうやら箒に乗っているのがソフィーだということに気づいたらしい。
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