魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

「大魔女殿を始めノールブルク領の魔女の皆には尽力してもらっているが、斑紋死病の感染は広がる一方だ」

(だから魔王に……というわけね)

 この世界とは違う世界に住んでいるといわれている魔王。

 魔女の使い魔だけが、魔王とコンタクトを取るための唯一の手段だ。

 しかし、使い魔ならどれでもいいというわけでもない。とりわけ賢い使い魔だけが魔王との連絡係を果たせる。

(それで、わざわざ大魔女を指名して呼び出したってこと……)

 魔王に親書を届けられる使い魔と契約している可能性が最も高い魔女だから。

 ソフィーはこれまでラーシュにも、ラーシュ以外の使い魔にも、魔王へのお使いを頼んだ経験はない。

 それでも、ラーシュならできるだろうという確信がある。

 ラーシュがほかの使い魔とは何かが決定的に違うことは知っていた。

「斑紋死病の特効薬を作ってくれるようにお願いしたいと思っている」

 娘たちの寝不足な顔が脳裏に浮かんだ。

 断る理由はどこにも見当たらない。むしろ願ったりだ。
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