魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

1.4

 ソフィーが王宮へと出かけてしまうと、イーダの感じていた心許なさは一層顕著なものになった。

 しかし、どうやらそれはイーダだけではなかったようだ。

 みんなの薬を作る手は、変わらずに動いていた。

 けれど、おしゃべりのほうは完全に止まってしまっていた。

 そして空気が明らかに重くなっていた。

 イーダはこういう沈黙が人一倍苦手だ。だからこういう場面で最初にしゃべり出すのは、決まってイーダだった。

 そして、今まさにイーダにその期待がかかっていた。

 イーダ自身もそのことをひしひしと感じていた。

(できれば明るい話題を……って、あるじゃない!)

 イーダはにんまりした。

「ねえ、聞いて、聞いて。私、ソフィー母さんから『使い魔と契約してもいい』って許可をもらったの!」

 この場にいる魔女たちは、イーダがどれだけそれを待ち望んでいたか、漏れなく知っていた。
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