魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
テーブルの上に置かれていた水差しを傾けて、テーブルに少しだけ水をこぼした。
その水を指で伸ばして、テーブルの上に魔法陣を描いていく。
「ええっと、言い出しは何だっけ……」
「『我と契約せんとする者よ、その姿を現せ』でしょ」
「それそれ……私の使い魔になってもいいと思うなら、顔を見せてくれない? きっと私たち仲よくなれると思うの」
鍋底が焦げ付かないようにかき混ぜながら、ほかの魔女たちは『ふふっ』と笑い出す。
「あなたのこと大事にする。決して無茶な仕事はさせないし、仕事をしてくれるたびにご褒美もあげるよ。だから私と契約しようよ。素敵な名前をつけてあげる」
「そんな召喚に応じてくれる物好きいるかしら?」
イーダだって、こんなふざけた呪文でいいとは思っていなかった。