魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
「こんなに可愛いのにねえ」
イーダは自分のつたない召喚に応じてくれたネズミらしきものに話しかけた。
イーダの後ろでは、まだ大騒ぎしている。
(あらら? さっきまで確かに生えていたはずの2本の角がなくなってる?)
「もしかして……母さんや姉さんたちがびっくりしたから、角は隠したの?」
ネズミもどきはぎこちなく頷く。
「何て賢い子なの! いい子ね」
イーダが人差し指の腹で頭をなでてやると、ネズミもどきは口角を上げ、『きゅっ』とうれしそうな声をあげた。
イーダは堪らなくなって、両の手のひらですくい上げた。
頬ずりするとくすぐったかったのか、耳元で『きゅきゅきゅっ』と小さな笑い声のようなものが聞こえてきた。
「そうだ、早く契約しなくちゃ。名前、名前をつければいいんだよね?」
ソフィーから使い魔との契約を許可してもらったのはついさっきのことだ。名前はまだ考えていなかった。