魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
「魔王は対価に何を要求してくるのかな……」
ひとりが呟いた。
(それ! それなんだよね……)
イーダを含め、全員が同じことを考えていた。
報酬として分かりやすい貴金属が一番いい。
けれど、首を傾げたくなるようなことを要求されることもある。というか、あるときを境にヘンテコな要求ばかりされるようになった。
不作に悩んでいた領主が豊作を願ったときには、『その年に収穫できた小麦を使って領内でパン作りコンテストを開催し、優勝者が作ったパンを捧げよ』といわれたとか何とか。
『魔王がパンを食べるのか?』と半信半疑ながら、使い魔にカゴいっぱいのパンを持たせたところ、カゴを空っぽにして戻ってきたという。
この話には、それ以降その領では毎年パン作りコンテストが開かれることになった、というオマケまで付いている。優勝者の作ったパンはもちろん魔王に捧げられる。