魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
そうかと思えば、ひどく残酷な内容のときもある。
(魔王らしいといえば魔王らしいんだけど……)
まことしやかな噂によると、ある国は隣国との戦争に勝利することを望んだ際に、勝たせる代償として王族全員の首を要求されたそうだ。
それでは勝ったところで意味がない。
結局その国は魔王に願いを叶えてもらうことは諦め、隣国に併合されたと伝え聞いている。
(今回は何を要求されるのかな……)
「とんでもない対価を求められたら、断るだけのことでしょ。それに特効薬を作ってもらえるとしても、それがいつになるかは分からないんだし、心配してても仕方ないわ。私たちはとりあえず薬を作り続けるだけよ」
ソフィーの言う通りだった。
魔女たちはそれからの数日間、表面上はそれまでと何も変わらない毎日を過ごした。
薬の材料を集め、薬を作り、王宮へ届けたのだ。
けれど、こっそり期待していた。王命から解放されて気が済むまで熟睡することや、普通の恰好をして町へ遊びにいくことを。