魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 ソフィーはこの緊迫感漂う状況に反して、優しく微笑んだ。

「言われた通りにしましょう。この場にグズグズ留まっていても、事態が好転しないのは明白だもの。それよりも魔王が対価として求めているものは何なのか確認して、できる対処を考えるべきよね」

 大魔女のその言葉に、みんなもぎこちないながら『そうだ、そうだ』と頷いた。

(ソフィー母さんはすごいな)

「私たちは後ろめたいことなんてひとつもしてないんだから、堂々と出ていくわよ」

 ソフィーはそれから魔法で鍋の火を消した。

「さっさと出てこい! ひとり残らずだ!」

(なぜ命令口調で怒鳴られないといけないの? 王宮軍のくせに、私たちが王命で斑紋死病の薬を作ってる最中だってことを知らないわけ?)

 イーダはこれまで自分たちがどれだけ大変だったかを思い出すと、悔しくて堪らなくなった。

 それでも奥歯をぐっと噛んで、ほかの魔女たちのあとに続いて外へ出た。
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