魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
大ばばたちも小さな子どもたちの手を引いて、別の小屋から出てきた。
「遅いぞ。そこに並べ」
集落の入り口前で横一列に並ばされた。
さっきからがなり立てている騎士が馬から降り、魔女を蔑んだ目で見てきた。
(ソフィー母さんが言ってた、『この領を出てしまえば、魔女なんて胡散臭い存在だと思われてるし、実際そう扱われる』っていうのは、まさにこういうことなんだ……)
ノールブルク領を出たことのないイーダにとっては、耐えがたいほど差別的な態度に思えた。
「この中に17歳の者はいるか?」
唐突な質問に、魔女たちはお互いを見合った。
「誰か答えろ!」
答えたのはソフィーだった。
「おりません」
「なら、16でも18でもいい。17に近い年齢の者!」
魔女たちはつい眼球だけ動かしてイーダを見てしまった。
イーダは18、といってももうすぐ19になるのだが、この集落で最も17に近い。
「お前か!」
まるで窃盗犯でも見つけたかのような言い方だった。
その瞬間全員で『しまった!』と思ったけれど、もはや手遅れだった。
男はイーダの腕を掴んでいた。