魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
それはイーダも疑問だった。
(斑紋死病の薬を一生懸命作らされたのに、それが不十分だったから、それに対する罰を与えようって考えなの?)
「髪の色を揃えたところで、平民に高貴な王女殿下の身代わりが務まるとは思えません」
「魔王相手だ。魔女なら一般人よりは上手くやれるだろうというご判断だ」
「そんな……」
ソフィーは絶句した。
イーダのほうは眩暈を覚えた。
(魔女のことを散々馬鹿にしておいて、その無茶苦茶なミッションは何なの? 魔女ごときが魔王を騙せるって、この男も国王陛下も本気で思ってるの?)
「『できない』というのなら、この集落を焼き払う!」
男が大声でそう言うと、集落を取り囲んでいる兵たちが誇示するように松明を掲げ、火矢を向けてきた。