魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 そこで現在、この集落では国王陛下の命により薬を作っている真っ最中というわけだ。

 休みなく働いて、すでに1ヶ月が経とうとしている。

 しかし感染者は増える一方で、薬は不足状態が続いているという。

 そもそも魔女の作る薬は特効薬ではない。

 斑紋死病を退治する薬を作れないわけではない。

 しかし病を退治しようとすると、病に侵されている内臓器官まで完全に破壊してしまうのだ。

 だから高熱と嘔吐の症状を抑えつつ、患者自身に免疫をつけさせる薬を作るしかない。

 斑紋が消えるまでの約1週間、薬を飲み続けなければならないが、その間にも他人に伝染(うつ)してしまうし、子どもや老人は回復が間に合わず亡くなってしまうことだってある。

 それでも悲しいかな、この薬以上に効果のある治療方法はなく、この薬を作れるだけ作るほかに手立てがないのが現状だ。
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